今やヨーロッパでは乗用車新車販売の半数以上を占め、大型車はもちろん小型車でも主流となっているディーゼルエンジン搭載車ですが、フォルクスワーゲンがその開発に乗り出した1970年代には、ディーゼル乗用車は販売こそされてはいたものの決してメジャーなものではなく、特に小型車の分野では、ほとんど見掛けられることはありませんでした。ディーゼル特有の振動、騒音、重量の大きさやコストなどさまざまな問題が、小型車に積むには不利に働いていたからです。
それだけに、フォルクスワーゲンが当時、旋風を巻き起こしていた初代ゴルフにディーゼルエンジン搭載車を設定したのは、まさに衝撃的なニュースでした。1976年に発表された、その排気量わずか1.5リッターのディーゼルエンジンは、同排気量のガソリンエンジンとのパーツ共用化によって、スムーズで静か、しかも軽量でコストも低く抑えることができる、それまでの常識を大きく覆すものだったからです。
最高出力50PSの十分なパワーとディーゼル特有のトルクがもたらす高いドライバビリティや、軽量設計によって実現したガソリン仕様と変わらないハンドリングや乗り心地、そして何よりその経済性の高さによって、ゴルフディーゼルはヨーロッパ、そして日本で大ヒットを記録します。特に日本では、1979年、1980年には何とガソリン仕様よりも多くの台数を販売し、日本市場に於ける輸入ディーゼル乗用車の、まさに先駆け的な存在となります。
さらに1983年には、1.6リッターに排気量が拡大されていたエンジンにKKK社製のターボチャージャーを組み合わせて最高出力を90PSに引き上げ、スポーティな内外装と組み合わせたゴルフ GTDが登場。早くもディーゼルエンジンの走りの楽しさという側面をアピールしてみせたのです。
その後も、フォルクスワーゲンは小型ディーゼルエンジンの開発を続けていきます。2世代目ゴルフに搭載された1.6リッターディーゼル・ターボエンジンには酸化触媒を採用。クリーン性を劇的に向上させます。さらに3世代目ゴルフの1.9Lディーゼルには、世界に先駆けて燃料直接噴射=直噴技術を採用。自然吸気を「SDI®」、そしてターボ過給式を「TDI®」と呼ぶこの最新ユニットは、パワフルさ、燃費の良さというディーゼルエンジンの長所をさらに引き伸ばすとともに、環境に優しいクリーン性能まで身に付けました。
このSDI、TDIの登場によって、ヨーロッパではディーゼルエンジン搭載車の人気に再び火が点きます。燃料の噴射圧力を高める技術が飛躍的に進歩し、しかも噴射タイミングを気筒ごとに制御できるポンプインジェクターも開発されたことで、直噴ディーゼルエンジンはさらに進化。3L以下の燃料で100kmの走行が可能なルポ3リッター TDIや、100kmを1リッター以下の燃料で走破するコンセプトカーである1リッターカーなど、その技術を用いたさまざまなモデルが生み出されていきます。
そして2007年には、それまでのポンプ式インジェクターに代わってコモンレール式燃料噴射装置を採用して、優れたパフォーマンスと、ヨーロッパの最新の排ガス規制であるEuro5をクリアする環境性能を両立させることに成功した排気量2リッターのTDIユニットを発表。さらに2008年には、世界一厳しいアメリカの排ガス規制「Tier2 Bin5」をクリアする世界初の乗用車となったジェッタ ブルーTDIが発表され、全米50州での販売が開始されました。 低燃費を徹底的に追求したポロに始まるBlueMotion各モデルも、やはりパワーユニットはディーゼルエンジン。さらに尿素水AdBlueを用いて排ガス中のNOxを還元するSCR触媒を採用し、ヨーロッパで2014年施行予定のEuro6排ガス規制を先取りしてクリアしたパサート ブルーTDIも2009年に欧州で発売されました。
フォルクスワーゲンの誇るTDIエンジンは、2009年から新世代に移行し、さらにダウンサイジングを進めるとともに、最新のインジェクター、コモンレール、排ガス後処理技術などを採用しています。
3気筒TDIは、排気量が1.4リッターが1.2リッターに、ゴルフやパサートで中心的な役割を担っていた1.9 TDIは、1.6リッターにそれぞれダウンサイジングしました。低燃費を徹底的に追求し、100キロ走行あたりわずか3.3リッターの燃料しか消費しないポロ BlueMotionに始まるBlueMotion各モデルも、やはりパワーユニットはディーゼルエンジン。
そのうえ、アイドリングストップ、ブレーキエネルギー回生システムなどの「BlueMotion テクノロジー」を搭載し、低排ガス、低燃費と優れた走行性能を実現しています。




