A Life with Volkswagen

文・金子浩久
撮影・田丸瑞穂

ビッグマウンテンスキーヤー 山木匡浩さん
ゴルフGTI

 スキーの楽しみ方が多様化し始めて、ずいぶんと経つ。昭和の頃にはゲレンデにはたくさんのスキーヤーが押し寄せ、並ばないとリフトに乗れなかったりした。
 今ではリフトに並ばず乗れるし、雪上車であらかじめ踏み固められたゲレンデを滑るばかりでもなくなった。以前は、指定のゲートで区切られたゲレンデ内だけでしか滑れなかったが、ゲレンデに連なった林の中を滑るバックカントリースキーやパウダースノーなども楽しめるよう、スキーの楽しみ方に幅が出てきた。
 4年前に筆者も信越地方のスキー場で、アクシデント防止のために義務付けられている30分弱の講習を受け、連絡先を登録してから指定のゲートをくぐってバックカントリースキーを楽しんだことがある。
 今シーズンの雪が降る少し前に、東京・新宿で行われたトークイベント「新しいスキーの夕べ 2022」を覗いてきた。ビッグマウンテンスキーヤーの山木匡浩氏が司会を務め、リモートでデモンストレーターの片岡嵩弥氏とフリーライドスキーヤーの勝野天欄氏を繋いで、スキーにまつわるさまざまな話を聞き出してシーズンに備えようという趣旨の会だった。

 ところどころ岩が顔を覗かせている急峻な山を飛び降りながら滑る、それこそ冒険そのもののフリーライドスキーが世界選手権として管理運営されていることを知らなかったし、ましてや2019年のニュージーランド大会で19歳だった勝野氏は2位に入っていたことに驚かされた。
 さらに、勝野氏は好きなスキーを続けていくためと他にもスキルを身に付けるためにプログラミングを独学し、海外遠征中でもリモートでWebエンジニアとして働いている。
 スキーというスポーツが新たな要素を次々と加えていき、また人々のスキーとの関わり方も昔とは違っていっていることが伺えて、とても興味深かった。
 山木さんは、2000年にアラスカのデナリ滑降から始まって、数々のスキーによる冒険を成し遂げてきた。翌2001年からのものを列挙してみても、ロシア北千島諸島、アラスカ・スクークン氷河、グリーンランドをシーカヤック&スキー、ペルー・ピスコ山スキー、インドヒマラヤをオートバイ&スキー、パタゴニア・ダーウィン山塊シーカヤック&スキー、アルパマヨ山頂より滑降、グリーンランドをシーカヤック&スキーなど、文字通り世界を股に掛けて滑っている。

 コロナ禍がなければ、再び、南米のパタゴニアの山の氷壁をアイスクライミングで登り、滑って降りてくる計画を実行する予定だった。それらの冒険行と並行して、日本の山々でスキーにまつわるあらゆる活動、山をスキーで滑るためのレッスンやパウダースノー斜面への案内を行っている。
「山を滑るためのレッスンを行い、一緒に登って降りてくるコーチとガイドの中間的な役割です」
 トークショーの聴衆には、山木さんのレッスンを受けたことのある人々も多数参加していたようだった。
 出身地である北海道や上信越の山々をメインにして活動を行い、北陸や中国地方のスキー場に出張することもある。スキー板と道具一式をクルマに積み込み、どこへ行くのも自分で運転している。それが、なんと北海道でも本州ででもフォルクスワーゲン・ゴルフに乗っているのである。

 本州でのベースとしている新潟県かぐらスキー場に山木さんを訪ねた。前日まで、今シーズン2回目のレッスンを行なっていて、この日はゴルフGTIで新潟港へ向い、夜のフェリーで北海道へ戻る予定だ。
 山木さんのゴルフGTIのルーフにはスーリーのキャリアとボックスが据え付けられ、その中にブリザードのスキーを収めて運んでいる。タイヤを冬用のスタッドレスに履き替えている以外に山木さんは何も加えていないが、前のオーナーが取り付けた前後のエアロパーツが残っている。

「冬のシーズン中は、ひとつの週末で2000kmはだいたい走ります」
 今回はフェリーで北海道に戻るが、かぐらから妙高や白馬などを巡ることもある。
「クルマで過ごす時間が長いので、僕にとって“クルマはライフそのもの”ですよ」
 たしかに、妙高は同じ新潟県だけれども、かぐらから向かうには大きく迂回しなければならないから距離が伸び、時間が掛かる。北海道なら、なおさらだろう。次のスキー場に行ったり、自宅に帰るために長距離を運転し続けることは、山木さんの言う通り、「ライフそのもの」に違いない。
 さぞや、山木さんのゴルフGTIの走行距離はスゴい勢いで伸びているのだろうと思ったら、そうではなかった。
「北海道には、他のゴルフもあって、そっちも乗っているので距離は少しづつ伸びているんです。ハハハハハハッ」
 どういうことなのだろうか?
「北海道には、クロスゴルフやゴルフワゴンも3代目と6代目の2台があります。他に車検が切れていますけど、このGTIの前に乗っていた4代目のゴルフGTIも持っていますし、実家には2代目のゴルフGTIもありますよ」
 そんなにたくさんのゴルフを持っているなんて!

 山木さんは、なぜそんなにゴルフを持っているのだろうか?
「ゴルフへのこだわりが強いんですね」
 こだわりは、どこから来ているのだろうか?
「ゴルフというクルマが進化してきた過程にとても興味を持っているんです」

 その始まりは、小学生の頃にまで遡る。山木さんの母親がクルマを買い換えようとして、ゴルフも候補の一台に上っていた。中古車店に一緒に見に行った。何台かの初代ゴルフを見て、試乗もした。
「子供心に、“ずいぶんと開放的なんだな”と感心させられました」
 それらの初代ゴルフは明るい黄色や水色のボディカラーで、スライディングルーフが装備されていた。シートもチェック柄。
「どれも、それまで母が乗っていたクルマや身近にあったクルマにはないものばかりで、とても新鮮でした」
 筆者も初代ゴルフに同じような想いを抱いていた。まず何よりも背が高めの2ボックスにテールゲイト付きというボディ形式が他にないもので、後席を畳めば広大な荷室として活用できる点にヨーロッパの合理主義を教わった。

 その一方で、水色や黄色のボディカラーやチェック柄のシートで楽しむ点に、クルマは大上段に構えるのではなく、身近でカジュアルな存在でも構わないことも知った。そういったところが当時の日本車とは明らかに違っていた。日本車では珍しかったスライディングルーフが付いているのも、ヨーロッパのクルマを強く意識させられた。
 結局、母親はその時は初代ゴルフを買うことはなかったのだが、山木少年には強いインパクトを残した。18歳で運転免許を取り、最初に買ったクルマが初代ゴルフだったのだ。

「初代ゴルフのディーゼル。4速マニュアル。3万円でしたね」
 次に乗ったゴルフは、初代ゴルフ・カブリオ。2代目ゴルフGLiも加わり、2台並行して持っていた。しかし、海外に出掛ける費用を捻出するために手放してしまった。遠征となれば数か月にも及ぶわけだから、日本にいる間は倹約しなければならない。
「もちろん、GTIのことは知っていましたが、まだ、クルマにおカネをたくさん遣えなかったので、GTIに自分が乗るなんて思ってもみませんでした」
 やがて実績を重ね、再びゴルフを持つことができたのが今から16、7年前のこと。友人の兄から3代目ゴルフGTIを譲ってもらえた。
「運転が楽しくて、長距離でも疲れませんでした。移動が楽しくなりました」
 もともとゴルフは好きだったが、GTIに乗って、さらに拍車が掛かった。
「GTIはパワーがあるので長い登り坂での追い越しでも加速が良いので短時間で済みますし、サスペンションも最適化されているので思い通りのラインで走れて、ストレスがありません」

GTIは、山木さんが抱いていたゴルフの長所をさらに伸ばした、理想のゴルフだった。
「スムーズなクルマは疲れないということを、その3代目GTIから学びました。その分、ハイオクガソリン指定だったので出費は嵩みましたが」
 その後に、V6エンジンを搭載し、4輪を駆動するゴルフRの出現によって、ゴルフGTIは最速のゴルフではなくなった。
「ゴルフRは特別版だと思います。GTIは、普通のゴルフの延長線上にあって、性能とハンドリングに磨きを掛けた、シリーズを代表するトップモデルです。そこがいいんです」

現在、山木さんの手元には2代目、4代目、5代目のゴルフGTIがある。初めて乗ったのが3代目GTIだったから、2代目から5代目まで歴代ゴルフGTIに乗ってきた。
「他にも、あるんですよ」
 クロスゴルフとゴルフカントリー、バナゴンT4の3台に他のクルマもあるという。いったい、フォルクスワーゲンを何台持っているのだろう。ゴルフカントリーは3年間のレストアから戻ってきたばかりだ。
「子供たちに、“今日はどのゴルフで送ってくれるの?”と毎朝訊ねられています」
 高校生の頃から基礎スキーの全日本選手権に出場していたが、スキーを職業として進んでいくのかどうか決めあぐねている時にゴルフカントリーに出会って、15万円で譲ってもらった。
「“スキーで稼げるようになったら再生しよう”という目標を立てて、そのまま10年間ぐらい寝かせていたんです」
 目標は達成され、予定通りレストアを始めて3年掛かった。そこまでしても欲しかったのだ。そんな想いが込められていたとは知らなかった。

「1台ずつに目標が立てられています」
 手放さずに手元に置いておく理由は、そこにあったのだ。4代目ゴルフGTIやバナゴンT4などにも、きっと何かの目標が設定されているのだろう。

 所有しているフォルクスワーゲン群と山木さんの活動は、単なる移動手段を超えた濃厚な関係で結び付いていて、活動の支えになっている。慢性的な雪不足とコロナ禍によって、スキーを巡る状況は決して芳しいものではない。それでも、次に山木さんに会う時は、ぜひスキーを履いて雪山で会いたいと願った。

取材・執筆
金子浩久

モータリングライター。1961年、東京生まれ。
クルマを、社会や人間とともにあるものとして取材活動を行っている。
代表作「10年10万キロストーリー」は、一台のクルマに10年もしくは、10万キロ以上乗り続けた人を訪ね、人とクルマが織りなす物語を記録した、インタービューノンフィクション。主な著書に「セナと日本人」、「地球自動車旅行」「ユーラシア横断1万5000キロ」などがある。


写真
田丸瑞穂

フォトグラファー。1965年広島県庄原市生まれ。スタジオでのスチルフォトをメインとして活動。ジュエリーなどの小物から航空機まで撮影対象は幅広い。また、クライミングで培った経験を生かし厳しい環境下でのアウトドア撮影も得意とする。

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